日本の人口は年々減少しています。反対に、在留外国人の数は増加の一途をたどっており、出入国在留管理庁の統計によれば、2025年6月末時点の在留外国人数は395万6619人で、過去最多を更新。
さらに日本の総人口に占める割合は3.2%にまでなりました。

もはや、どの歯科医院も「外国人はうちには来ない」、「今のままで十分」といった考えは通用しない時代になっています。
外国人患者さんの価値観や考え方に寄り添って業務をおこなうことができるよう、
「求められる対応」、「現場での心構え」、「具体的なツール」の3本に分けてご紹介します。

歯科医院の現場にも求められる、国際対応力。

海外からの患者さんへの多言語対応、多文化対応のためのスタッフ教育、地域連携…。
ここ数年、歯科医院のグローバル目線での取り組みが盛んになっています。
それは東京や大阪などの都市部だけでなく、地方にも広がり、全国の歯科医院が国際的な配慮を求められる時代となっています。

●在留外国人の増加

就労や勉強のために日本を訪れ、中長期にわたり滞在するのが「在留外国人」。
法務省の外局である出入国在留管理庁によると、2024年末時点の在留外国人数は約377万人で過去最高を更新しています。
特に、外国人労働者や技能実習生、ワーキングホリデーを利用した外国人が増えており、日本語を習得する前に労働ビザを取得し、日本で暮らす人々も増えています。

●訪日外国人の増加

日本政府観光客(JNTO)が発表した2025年9月の訪日外国人客数は、前年比13.7%増の326万6800人で、9月として初めて300万人を超えました。日本は世界の観光魅力度ランキングでも常にトップにランクインし、日本の食文化やポップカルチャーをはじめとする魅力が注目されています。

さらに、近年注目を集める「ヘルスツーリズム」では、温泉や定期検診、美容医療などが人気です。歯科分野でも、医療費の質の高さや低価格を活かした「デンタルツーリズム」が注目されているんだそう。

文化的配慮はできていますか?

全国どの地域でも外国人患者が来院するのが当たり前の状況は、今後ますます加速することが予想されます。
外国人患者は、言語や文化、習慣などさまざまな点で日本人患者と異なるため、通常に比べて「安全レベルが下がる」あるいは「円滑さが失われる」ということが起こりがちです。
例えば、イスラム教徒の女性患者がプライバシーを重視する場合、男性医師による診察に不安を抱くこともあります。
また、宗教上の理由で特定の薬剤や治療法を避けたいという希望もあるかもしれません。

そうした背景を知らずに対応してしまえば、トラブルや不信感につながる恐れも。
日本の文化に馴染んでもらうことも重要ですが、患者が安心して医療を受けられるよう、医療機関が対応を整えることが求められます。

●外国人患者の受け入れに必要な対応

▶ 文化的背景の理解
  宗教的価値観や文化的習慣を尊重し、患者が安心できる環境を提供する。
▶ 医療通訳の活用
  言語の壁を越えるために、多言語翻訳ツールや通訳サービスを活用する。
▶ 多文化対応の教育
  医療従事者向けの文化的な感受性を高めるトレーニングを実施する。

対応力を高めるには?

外国人患者への対応力を高めるためには、院内の環境整備に加え、スタッフや経営サイドの学びが重要となってきます。

●外国人スタッフの雇用

外国人スタッフの雇用を積極的に行う歯科医院が増えています。
これは人手不足の解消にとどまらず、実際に外国人患者が来院した際の対応をより安心して任せられるという点でも大きなメリットがあります。また、外国人スタッフがこれまで経験してきた母国の歯科医療について共有し合うことで、院内に新たな視点や学びが生まれるのも大きな利点です。

●海外での研修に参加

海外での研修に参加することも非常に有効な手段です。
日本ではなかなか具体的にイメージしにくい外国の歯科医療事情についても、実際に現地を訪れ、医療現場を見学し、現地の関係者と直接話をすることで、文化的・医療的な違いをより深く理解することができます。

●海外の歯科関係者との交流

近年では海外と日本の歯科関係者による交流事業も活発に行われています。
こうした交流会に参加することで、比較的少ない費用で海外の歯科医療に関する知識を得られるほか、国際的な人的ネットワークを構築する貴重な機会にもなります。

まとめ

外国人患者への対応力は、皆さんの歯科医院のアドバンテージになります。
日本全体が少子高齢化に向かう中、外国人という新しい患者層への対応を進めることは、今後の歯科医院経営を支える大きな柱となるはずです。
中編では「現場での心構え」についてご紹介します。

Previous post デンタル女子のための冬の目元ケアアイテム。
Next post Sherpa.株式会社 代表 大久保加奈さん