調舌士として、舌の重要性を啓蒙し、全身の健康を整え、美容や生活の質の向上に繋がる舌トレーニングを提唱している高松舞さん。日本舌協会を立ち上げ、歯科以外のジャンルにも活動の幅を広げている。
PROFILE
歯科衛生士として18年の臨床経験を経て、舌の重要性を広めるべく独立。DHまいまい先生のアカウントでインスタグラムでの発信を行うほか、オンラインや全国各地に出向いてのセミナーを行う。2024年、著書「Let’s調舌タイム」発売。日本舌協会設立。

―舌の重要性に気付かれたきっかけは何だったのでしょうか?
高松 よく歯科衛生士業務の延長ですかと言われたりするのですが、もともとは自分自身の美容の悩みや子どもの食いしばりや頭痛の問題がきっかけで、表情筋トレーニングを学び始めました。そのうちに舌の重要性や口育の大切さに気付きはじめまして、どんどん舌の勉強にのめり込んでいったのです。口腔や舌のトレーニングを実際にし始めると、私や子どもの悩みが驚くほどに解消され、やっぱり本当に舌は重要なんだなと改めて実感しました。
―舌がどのように全身に影響するのでしょう?
高松 美容面では全てのことが舌の位置と関係していますが、例えば舌が落ちていると下顎や舌の重さでどんどん顔が伸びてたるんできますし、舌がしっかり使えていないと他の筋肉を使って飲み込みをしてしまいますので、変なところにシワができてしまったり、顔に左右差ができてしまいます。また、口呼吸になってうまく酸素を取り込めませんので、疲れやすくなったり、いびきなどによる睡眠時無呼吸症候群に繋がるケースも多いです。

―それほど舌が重要だとは知りませんでした。
高松 それだけでなく、舌がしっかり動かないと、摂食嚥下もうまくできなくなってしまいます。人間は咀嚼したものを舌にグッと圧力をかけて上顎の方に動かすことによって飲み込むことができるのです。しかし、舌の筋力が低下して、その圧力がなくなってしまうと、喉に詰まらせてしまいます。高齢期歯科の歯科衛生士さんがよく仰っていますが、いくら歯が残っていても舌が動かない人は、自分で食事ができません。逆に、歯がなくても舌が元気な人は自分で食べられるそうです。
―舌のトレーニングをすることで誤嚥の防止にも繋がるのですね。
高松 もちろんです。私の祖父も誤嚥性肺炎で亡くなったのですが、本当にそういう方が多いですよね。入院中は人と話すとか口を動かす機会がどんどん減っていきますのでなおさらです。基幹病院に勤めていた歯科医師の先生も仰っていましたが、病院食の柔らかいニンジンですら飲み込めなくて喉に詰まらせてしまう人がいるそうで、喉のトレーングやケアは非常に大切ですね。
―命に関わる問題にもなり得るということですね。
高松 嚥下だけでなく、舌が動かないと唾液も分泌されませんので、消化不良にも繋がります。その結果、腸にも負担がかかりますし、空気を一緒に飲み込むことで便秘の原因にもなってしまいますので、若い人にとっても重要な問題です。

―それでは、調舌トレーニングとはどのように行っていくのでしょう?
高松 まず、多くの人が舌がカチカチになってしまっていますので、それをマッサージしていくことから始めます。その後に、舌を回したり、上下に動かしたり、細くして突き出したりという基本の動きをしてもらうのですが、これ自体できない人が非常に多いですね。ようやく動くようになってきた段階で、舌を挙上させる訓練や水を使った飲み込みの訓練に加え、姿勢をはじめとした全身を使ったトレーニングも行っていきます。
―調舌トレーニングでどのような効果が期待できるのでしょうか?
高松 顎の下のたるみがなくなったり、フェイスラインが綺麗になったりとお顔の変化はすごくありますね。あと、私の子どものように食いしばりがなくなったり、いびきもなくなります。MFTではなかなかいびきが解消されない人もいますが、体全体を使う調舌トレーニングの方が効果が出やすいですね。最近は女性でもいびきに悩んでいる方が増えてきていますが、トレーニングを行っていびきが解消されたという方も多くいらっしゃいます。また、抱っこの仕方や離乳食の食べさせ方などを学ぶことでも、口腔機能不全症の予防にもなりますので、ママさん世代にも人気です。

―そういったトレーニングをSNSなどを通して広めていらっしゃるわけですか?
高松 インスタグラムでの発信を主体に、オンライン講座や全国を回って対面で調舌トレーニングを指導させていただいています。また、クラウドファンディングで資金を集めて、舌トレーニングなどの口腔セルフケアをまとめた著書「Let’s調舌タイム」を自費出版しました。歯科衛生士さんにご購入いただいたり、待合室に置いていただいている歯科医院さんもあり、知ってくださっている人が徐々に多くなってきたかなという実感はあります。
―一昨年には日本舌協会も立ち上げられましたね。
高松 将来的に、この調舌の知識を歯科だけでなく介護施設やその他の医療関係、保育園、幼稚園、小学校など様々なジャンルに広めていきたいと考えておりまして、その足場として日本舌協会を立ち上げることにしました。調舌トレーニングは歯科医療ではありませんので、歯科以外の方でも取り組むことが可能です。全国各地に調舌学を学んだ調舌トレーナーが増えていけば、もっともっと調舌学が広まっていくと思います。最近では、プロサッカーチームや高校サッカーの強豪校と提携して、調舌トレーニングの指導をさせてただくようににもなりました。舌の位置や動きは呼吸のしやすさや体幹にも影響しますし、スポーツでのパフォーマンスとも密接に関係しますので、そういった活動にも取り組んでいきたいですね。その他にも舌は全身の様々なことに関係していますので、まずは舌の重要性について広く知っていただくための活動を続けていきたいと考えています。

