昨年4月に、クリニックの研修事業を行う会社を立ち上げた田村沙織さん。田舎にポツンとあるクリニックの売上を、5,000万円から1億円に倍増させたスキームをベースにした各種研修を行っている。自ら動く歯科衛生士を体現した田村さんの言動には説得力があると人気だ。

PROFILE

田村沙織(たむら・さおり)

日本大学歯学部附属歯科衛生専門学校卒業。小児歯科、口腔外科など様々なジャンルのクリニックで臨床経験を積む。2024年4月、株式会社P’s conexion設立。臨床を続けながら、クリニック研修事業を行っている。

https://www.instagram.com/tc.tamura/?hl=ja


―歯科衛生士としての経歴を教えて下さい。

田村 臨床一筋で、現在22年目になります。結婚や出産など、ライフステージの変化に合わせて転職してきましたので、小児歯科だったり外科だったり、それぞれのクリニックの特徴に応じて様々なことを学ばせていただきました。転機となったのが、7軒目となる埼玉の田舎にポツンとあるユニット4台の小さなクリニックでした。子育てのこともありパートで入らせていただいていたのですが、スタッフの皆さんとランチをしていたときに、「お給料が安い」という話をしていたのです。ありがたいことに私は十分なお給料をいただいておりましたので、他のスタッフさんの待遇に驚きました。自分がすごく良い環境で働けているのは彼女たちの支えがあってこそですので、院長に「みんなのお給料を上げるために、私に何か出来ることはありませんか?」とお聞きしたんです。最初は難しいとの返答だったのですが諦めきれず、「もし物販の売上を伸ばすことができたら、どんな形でもよいので彼女たちに還元していただけますか?」と提案したところ、「面白いね」と了承してくれました。

―すごい行動力ですね。

田村 当時、そのクリニックは物販に全く力を入れておらず、一ヶ月の物販売上が2,000円とか3,000円というレベルでしたので、そこに伸びしろがあるなというのは薄々感じていました。まず商品ラインアップを変更するため、すでにある在庫をあの手この手で捌きまして、新しい商品にどんどん入れ替えていったところ、どんどん売上が伸びていったんです。また、歯ブラシや歯磨剤では粗利が少ないので、院長に相談して粗利が大きいCURAPROXの電動歯ブラシも導入させていただきました。CURAPROXの電動歯ブラシは、年ごとにたくさん売ったクリニックが表彰されるといいうことで、導入したのが6月で圧倒的に不利な状況でしたが、やるなら1位を狙いますと宣言して、その通り日本一になることができたんです。私がどんどん患者さんにご提案している姿を見て、「私たちもやらなければいけない」と他のスタッフさんも頑張ってくれたのが大きかったですね。院長にも凄く喜んでいただけまして、物販の売上分の中からほんの少しですがボーナスに還元していただきました。

―物販のコツのようなものはあるのですか?

田村 売上だけを目的にしていてはうまくいきせん。まずは患者さんのニーズの把握が重要です。問診表から読み取れる情報はもちろん、雑談などでお困りごとをとにかく沢山引き出して、それを解決するためにはというスタンスでやっています。その結果、患者さんもすんなり受け入れて下さいますし、悩み事が解決できて喜んでくださるケースも多いですね。

―物販の他にも取り組まれたことはあるのですか?

田村 物販の売上を伸ばすことができたことで、私の中でもっと売上を作る方法を考えたいという想いが沸々と湧き上がってまいりまして、ホワイトニングの導入や自費クリーニングのメニュー化、自費補綴物のカウンセリングなどに取り組んだところ、インプラントも矯正もやっていないにもかかわらず、1年で年商が5,000万円から1億円に倍増したんです。もちろん、それぞれに勉強しなければいけないことがたくさんあり、大変ではありましたが、この実績が自信になり、フリーランスとしてやっていくという決意もできました。

―会社を立ち上げようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

田村 私のノウハウを必要としているクリニックさんもあるのではないかと研修事業を始めたところ、わりと反応が良かったので、どうせやるならしっかりやっていこうと、会社を立ち上げました。研修については決まったメニューがあるわけではなく、院長先生とのヒアリングから始まります。ただ、なかなか最初から本音をお話しいただけるケースは少ないですので、信頼関係を構築しながら徐々に本当のお困り事を把握し、それに対しての解決法をご提案させていただくといった形です。もちろん、私も万能ではありませんので、専門外であれば業務提携先にアウトソーシングすることもありますし、解決のために一番良い方法をご提案させていただいております。

―臨床も続けていらっしゃるのですか?

田村 先ほどお話した埼玉のクリニックで、週3日ほど働いております。二足のわらじは難しい面もあるのですが、自分自身の実績を作り続けることが大切だと思っていますし、自分が作ったスキームに再現性があるのかを試すこともできます。「田村さんだからできるんじゃないの?」と言われないように、そのスキームで実際に私と同じような成績を出しているスタッフがいますと言えるようにしておきたいですので。

ー最後に、今後の展望を教えて下さい。

田村 ご存知の通り、歯科衛生士は離職率が高い職業になっています。せっかく一生懸命勉強して取得した資格が活かされていない現状は非常に残念です。もし、私の持っているスキームで、仕事に対するやりがいや自信や誇りを持って働くことができる歯科衛生士が増えれば、離職率の低下にも繋がりますし、仕事が楽しくなれば、「こんなことををしたいです」とどんどん自分から提案するようになり、クリニックに活気が生まれるようになると思います。そういった自発性のある歯科衛生士がたくさんいるクリニックは、院長先生がご自身の診療のパフォーマンス向上に注力できると思いますし、より多くの歯科医院がそういった環境を作れるようにサポートしていきたいですね。

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