オフィスホワイトニングの導入指導をはじめ、様々な得意分野を持つフリーランス歯科衛生士と協業してスタッフ育成や院内の仕組み作りを行っている井本ひとみさん。「歯科医師には安心を、歯科衛生士には楽しさを」の理念のもと、活動の幅を広げている。

PROFILE

井本ひとみ

宮崎歯科技術専門学校歯科衛生士科卒業。症例数5,000以上を誇るホワイトニングのスぺシャリスト。2024年7月、株式会社Me & You設立。オフィスホワイトニングの導入指導を中心に、各種スタッフ研修事業を展開している。

https://meandyou-debuter.my.canva.site/


―井本さんと言うと、ホワイトニングというイメージがありますが、昔から興味があったのでしょうか

井本 地元の宮崎県から上京して、新卒で勤務した頃から、そのときの院長先生に「ホワイトニングをしたいんです」と言っていました。ただ当時は、まだホワイトニングが日本に入ってきたばかりの頃で、すごく評判が悪かったんです。歯が粗糙になるとか、エナメル質がダメになってしまうか、失活してしまうとか、悪い噂ばかり流れていまして、これでは提供できないということでした。その後、出産を機に地元の宮崎に戻った際に、『ホワイトエッセンス』の加盟歯科医院が初めて宮崎県にできたということで、転職を決意したのです。と言っても、それまで順風満帆だったわけではなく、宮崎に戻ってからは大変でした。娘が1歳になったタイミングで復職したのですが、たった1年で知識も技術も忘れてしまっていたんです。もう本当に何も覚えていなくて、自分で勉強し直そうにも当時はまだネットも普及し始めたばかりの頃で、手元にあるのは専門学校の時の教科書だけ。しかも子育てをしながらのパート勤務でしたので、なかなか厳しかったですね。ですから、復職が怖くてなかなか復帰できないとか、復帰したけれど続かなかった方の気持ちはよく分かります

―そういう意味では、井本さんにとってホワイトニングがターニングポイントになったということですね。

井本 正直なところ、通常のメインテナンス業務ではモチベーションが上がっていませんでしたので、ホワイトニングをやっていなければ、歯科衛生士を辞めていたかもしれません。しかし、ホワイトニングのおかげでやりがいを感じることができ、主体的に動くことができるようになりました。

―どういったところにやりがいを感じられたのですか?

井本 自分で患者さんにヒアリングして、メニューを構築して、クロージングして、売上を伸ばしていくという一連の流れを自分一人で担当しなければならないので、大変ではあるのですがやりがいはありました。泣きながら感謝してくださる方もいらっしゃいましたし、私がいるから来て下さるということがダイレクトに伝わることが多く、それがモチベーションに繋がっていったと思います。その上、患者さんに対する責任感から、通常の衛生士業務もしっかりと勉強しなければという気持ちも芽生えました。

―通常の衛生士業務も関係してくるのですね。

井本 ホワイトニングでは施術の前に必ず口腔内診査をします。例えば、カリエスやクラックがある場合、この患者さんは施術の際に染みる可能性があるため、事前にこれをやっておこうというような対応が重要になります。そういった点においても、ホワイトニングをし始めて一般的な歯科衛生士業務をしなくなって口腔内を診る力が落ちていましたので、歯周治療の知識を学び直しました。

―フリーランスとして独立されるきっかけは何だったのでしょう?

井本 再婚を機に東京に出てきまして、2軒の歯科医院に就職しました。ただ、どちらの歯科医院もホームホワイトニングのみで、オフィスホワイトニング用の照射器やエアフローなどの機器はあるものの、全然使っていない状況だったんです。それがもったいないなと感じ、私がメニュー化してオフィスホワイトニングを導入しました。その結果、ホワイトニングの患者さんが増えたことはもちろん、銀歯をセラミックにしたいという患者さんが増えたり、関連してその他の自費診療メニューの売上アップにも繋がりましたので、これは他の歯科医院でも活かせるのではないかと考え始めたのがきっかけです。また、オフィスホワイトニング導入の際に、他のスタッフさんへの教育も担当させていただいたのですが、そこで教える楽しさを体感したというのも、フリーランスとしてやっていこうと考えるきっかけになったかもしれないですね。

―どのような活動をされているのですか?

井本 最初はホワイトニングの研修講師として活動をスタートしましたが、さまざまな歯科医院で研修をさせていただく中で、現場の歯科衛生士さんたちが多くの悩みや課題を抱えていることに気づきました。その経験を通じて、現在ではホワイトニングに加え、歯周基本治療や歯科医療物販学など、幅広い内容に対応した研修メニューをご用意しています。各医院の状況やご希望に応じて、オーダーメイド型の研修としてご提案させていただいております。また、フリーランスとして活動を続ける中で、それぞれの分野に特化した歯科衛生士と連携し、医院全体で取り組める体制を整えています。そうしたプロフェッショナルと連携し、チームで医院のニーズに応じた取り組みも本格的にスタートさせるため、昨年7月に株式会社Me&Youを立ち上げました。今後も、歯科医院の課題に寄り添いながら、現場に即した学びと実践のサポートを届けていきたいと考えております。

―歯科衛生士同士の交流も積極的に行っているとお聞きしました。

井本 4年ぐらい前に、LINEのオープンチャット機能がスタートしたときに、すぐに「歯科衛生士の仲間を作りたい」というタイトルで立ち上げました。元々は私自身が悩みを相談したいという気持ちが発端だったのですが、無料ということもありどんどん人数が増えていきまして、あっという間に100人、500人、1000人を超えて、現在は1400人にもなっています。このオープンチャットは匿名で参加できるため、誰にも言えない悩みや、今さら聞けないようなことも気軽に相談できる場になっています。私は現在、管理人としてみんなのチャットの様子を見守っている立場です。一方で、私のあだ名にちなんだ「ひとんぽ会」という交流会もあります。同じ志を持つ仲間たちと集まり、美味しい食事とお酒を楽しむ時間は、まさに至福のひとときです。最近では、そうしたリアルでのつながりもどんどん広がっていますね。

―最後に、今後の展望を教えていただけますでしょうか?

井本 ほとんどの歯科医院の院長は歯科医師であり経営者です。それ故に忙しく、スタッフにかける労力や時間がなかなかとれないというのが現状ではないでしょうか。だからこそ、私たちがその部分をサポートすることで、先生方が「教育や育成に悩まず、安心して治療に集中できる環境」を作っていきたいと考えています。現在は特に「新卒教育プロジェクト」に力を入れていまして、入社後の一定期間を私たちにお任せいただくことで、育成のベースをしっかり作る仕組みを整備中です。昔は、「専門学校で学んだらすぐ現場で即戦力に」という風潮もありましたが、今は「就職してから育てる」ことを前提とした教育体制へと時代が変化しています。もちろんこれは、学校教育を否定するものではなく、役割の分担がより明確になってきているということです。弊社の教育プログラムに乗っていただければ、1年目から安心して任せられる歯科衛生士を育てることが可能です。私をはじめ、現場経験と実績を兼ね備えたプロの歯科衛生士たちがチームとなってサポートしていきますので、安心してお任せいただけたらと思います。

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