ホワイトニングサロンBeauteを全国6店舗運営し、ホワイトニングをベースにチーム育成などを組み合わせた出張研修事業を行う株式会社ボーテの代表取締役・柏野紗耶加さん。歯科衛生士として起業して10年以上、現在の取り組みや今後の展望をお聞きしました

Profile

株式会社ボーテ 代表取締役
柏野紗耶加(かしの・さやか)

一般歯科で3年勤務後、大手フランチャイズ歯科医院にて5年連続売上トップを達成。28歳で株式会社ボーテを設立し、ホワイトニングサロンを開業。現在、全国で6店舗展開する。歯科医院に向けたスタッフ研修事業も行い、自立した働く女性の育成を目指し、活動の幅を広げている。

株式会社ボーテ
https://beaute10.com/


―歯科衛生士として起業を目指した理由は何だったのでしょうか?

柏野 歯科衛生士の国家試験に合格したのが20歳だったのですが、親の借金を返したり、祖母の面倒を見たりといった家庭環境の中で、家族を守るためにお金を稼がなければいけないというのがまずありました。そのような中で、歯科衛生士としてどうやってお金を稼ぐかと考えたときに、思い切って起業しようと考えたわけです。そこから、28歳で起業するという目標設定を掲げ、そこに向けてとにかく進もうと。周りの20歳よりも背負うものが大きかったのだと思いますね。そこから、ペリオや訪問歯科など色々体験した中で、自分に向いているなと感じたのがホワイトニングでした。ホワイトニングをベースに、クリーニングやデンタルエステを行う審美予防専門のクリニックであれば、歯科衛生士としてのスキルも活かせるなと、開業を目指したわけです。

―ビジョンはあっても、歯科衛生士として起業するのはなかなか難しかったのではないですか?

柏野 そうですね。目標はあれど、実績もないし、人脈もありませんでしたから。そんな中で、一般歯科で3年間働いた後、大手フランチャイズ歯科医院に就職して、全国売上ナンバーワンを目指しました。その結果、5年連続で全国売上トップを達成することができ、ある程度自分に自信を持てるようになったと思います。それから、休みの日には経営学の勉強会に通って、20代前半はとにかく休みなく働いて勉強したという感じです。ただ、いざ本当に起業するとなると、調べれば調べるほど歯科衛生士の起業は難しいということが分かるばかりで、周りからの反対も多かったですね。親も心配していましたし。それでも、28歳で起業すると決めて走ってきた自分と、私を信じてくれた方々の決断を正解にしたいという想いで何とかやり遂げました。

―その結果、目標通り28歳で起業されたわけですね。

柏野 最初は心配な気持ちもありましたが、先生方の賛同をいただき、無事開業することが出来ました。また、たくさんの方にご来院いただき、またリピートして来ていただける方も非常に多く安心しました。おかげさまで順調に店舗数も増やすことができ、現在は東京2店舗、大阪2店舗、神戸、沖縄の6店舗を運営しております。

―ホワイトニングサロンBeauteの特長を教えて下さい。

柏野 ホワイトニングは、硝酸カリウムとハイドロキシアパタイトを配合した自社開発の薬剤を使用しておりまして、沁みや痛みを軽減した上で、再石灰化により歯質を強くすることが出来ます。施術後の飲食制限がないというのも特長ですね。虫歯・歯周病予防のプロフェッショナルクリーニングは、スケーラーチップやエアフローの当て方などの研修を行っておりますので、痛みや不快感が少ないと好評です。また、デンタルエステは咬筋や口輪筋などをマッサージすることで、小顔効果やほうれい線ケア、歯肉の活性化が期待出来ます。

―歯科医院に向けたスタッフ研修事業にも力を入れられているとお聞きしました。

柏野 以前はホワイトニングやクリーニング、デンタルエステの導入研修だけだったのですが、最近は接遇やチーム育成、開業前研修など、歯科医院のお悩みに応じた様々な研修をさせていただいております。中でもご依頼が多いのは、ホワイトニングの導入にチームビルディングやチーフ育成、いわゆるナンバー2の育成を組み合わせた研修です。チーフ育成に関しては、チーフの役職には就いているけれども、いまいち何をすればよいかわからないという方をサポートさせていただいたり、そもそもチーフがいないという場合には、3年ぐらいの基礎研修の中で芽が出てくる子をチーフに育てていくこともあります。チーフに必要なスキルとして、診療の技術的な部分はもちろんですが、人材育成のフィードバックスキル、周りのスタッフに言うべきことを言えるスキル、ミーティングを円滑に進めるファシリテーションスキルなどがあります。また、医院のナンバー2となると、お父さんである院長の言葉や考えを通訳するお母さん的な役割を担わなくてはなりません。

―スキルの指導からメンバーのセレクトまで幅広いですね。クリニックの反響はいかがですか?

柏野 3年から5年研修に行かせていただいている中で、1年半ぐらいで院内の水質が変わっていくのが分かります。スタッフの皆さんが本当に主体的になっていくのが見えるんですよ。例えば、キャンセル率が高い場合は、どうやってキャンセル率を下げるのかという案を自分たちで考えて、実際に取り組んでみて、そのデータをもとに院長に提案したり、自発的に院内で勉強会を開催したり。学ぶ環境があれば、どんどん成長していくのが分かります。そうなってくると院長先生の負担も少なくなっていきますので、良いスパイラルになっていきますよね。

―教育体制がしっかりと確立されている歯科医院が少ない中で、こういった研修には価値があると思います。

柏野 ありがとうございます。おかげさまで、こちらの研修も先生方の口コミで広まりまして、日本全国に行かせていただいております。行っていないのは、もう長崎県と鹿児島県だけですね。最近では、規模が小さな歯科医院でも、5医院とか10医院合同で呼んでいただいて各医院の事例発表をしてもらったりと、新たなステージに入ってきたように感じています。今後もこれを続けることによって、歯科業界において、研修の実施を当たり前にしていきたいですね。歯科衛生士が離職したり業界を離れる原因の一つは、研修の未実施にあります。一般企業では入社後に新人研修がありますが、多くの歯科医院では忙しさや人手不足などもあり、そういった機会が設けられていません。社会人としての心構えを学ばぬまま、技術の会得ばかりが優先されているのです。そのため、歯科医師と歯科衛生士、歯科衛生士同士のしっかりとした人間関係を構築出来ず離職の選択をしたり、半ば諦めたように働いているように見受けられます。しかし、「働くってこんなものかな」と諦めているのはもったいないです。研修を通して人との関わりを諦める人を減らし、働く女性の幸せを作る。そうすれば、自ずと歯科医院も元気になりますし、ひいてはその変化が患者さんに安心感をもたらすのではないでしょうか。

―Beauteとしての今後の展望をお聞かせ下さい。

柏野 昨年10月に10周年を迎え、私自身38歳になったのですが、あと15年で売上30億というところまでは達成したいと考えています。ただ、売上を上げるということが目的ではありません。売上が増えて会社の規模が大きくなってくると、スタッフがチャレンジ出来る幅も広がりますし、失敗を許容することも出来ます。そういった部分で、一緒に働いてくれるメンバーのチャレンジするステージをたくさん作っていきたいですね。

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