Ciメディカル歯科衛生士の藤田です。
突然ですが、特に新人歯科衛生士の皆様、小児対応にお困りではありせんか?かく言う私も昔から子供は好きでしたが、新人衛生士だった頃は小児の対応に大変苦労しました。単純に子供と遊ぶのとはもちろん勝手が違いますし、「子供が怖くないように声掛けしてね」と歯科医師や先輩衛生士に言われましたが、「声掛けって何を言えば良いの!?」と戸惑う日々でした。
そして先輩衛生士が小児に声掛けしているのを見たり聞いたりして、見様見真似で少しずつこなせるようになってきた頃、運よく小児の抑制治療を専門に行っているベテラン歯科衛生士の方に実際に小児対応のコツを教えてもらう機会がありました。ちょうど当時のスタッフに5歳の娘さんがおり、その子をモデルに小児の歯科トレーニング方法を教えてもらい、なかなか貴重な経験が出来たと思っています。そして、独身の頃バリバリ臨床で活躍していた私も結婚し、現在は3歳5歳二人の男の子のママです。今回はママの経験も踏まえ、子供の歯の守り方や小児対応の際のポイントをお伝えできればと思います。
当時勤めていた歯科医院では初診で未就学児が来院される際、少し長めにアポイント時間を取るようにしていました。まず診療チェアに座れるかどうかも分からないからです。人生で初めて歯科医院に来院する子供はもちろん動く椅子なんて見たことはありません。ですから、まずは倒さずにチェアに座れるかの確認から行います。そして男の先生を怖がる子もいるため女性の歯科衛生士が最初の対応を行うようにしていました。
- チェアに座れない場合
保護者の方の膝に座らせ一緒にチェアに座ってもらう - チェアに座れるが衛生士が口の中を見るのは嫌がる場合
保護者に術者椅子に座ってもらい口が開けられるかやってみる
そこまで出来たらまずは歯磨きをしてもらう
出来たらこれでもか!というほど褒めます。褒めるポイントとして「すごいね」だけでなく、具体的に「椅子に座れたね」「ママに歯磨きしてもらえて上手だったね」など行動を褒めることが重要です。
そこまで出来たら器具の説明です。探針など先が尖っている器具は基本セットから抜いて見えないところに避けておいても良いでしょう。ミラーやバキュームなど実際に触ってもらい「痛くない、怖くない」道具と理解してもらいます。そこまで丁寧に行うと大抵の子は口に入れても大丈夫と理解し口を開けてくれるようになります。1回で出来ない場合は諦めてアポイントを取り直すこともありました。
カリエスがなく毎回メンテナンスのみの場合は大きな問題にはならないと思いますが、一番苦労するのはやはりカリエス治療になった場合です。では、ここからは治療のコツについてお話していきます。まずはタービンやバキュームなどの器具の説明から行います。ここで役に立つのが、小児が怖がらないようにイメージしやすいものに言い換えることです。
- タービン
「ビューン!飛行機みたいな音がするね。これで先生がムシバイキンをやっつけてくれるんだよ」 - バキューム
「大きい音がするけれど歯医者さんの掃除機だよ」 - 3Wayのエアー
「シュー!風が出て涼しいね!これでお口のお水を吹き飛ばすよ」
などなど。バキュームは実際にコップに入れた水を吸ったり、バキュームチップのゴムの部分が痛くないのを理解してもらうために小児の腕や手のひらを吸ってみます。
実際に口腔内で練習です。
- まず歯にエアーをかける練習から始め、水を出してバキュームで吸うところまでやってみます。
- それが出来たら、タービンで水を出し口腔内に水を溜める練習もやってみます。鼻呼吸が出来ないと口に水を溜められないのでその練習も大事ですね。
- 「3数える間お水を溜めてみよう!」出来たら「じゃあ次は10数えるよ」と、段階を踏んで少しずつ時間を長くしていきます。
この様に少しずつ小児に「出来た!」経験を積ませていくことでスムーズに治療できるようになります。どうしても出来ない場合、サホライドで経過観察をしていくこともありました。が、抜髄が必要など急を要する場合は抑制治療を行います。ここからは抑制治療のポイントやコツをお伝えします。
まず抑制治療に関わるすべての人間が必ず第一に頭においておかないといけないことがあります。それは「安全に歯科治療を進める」ことです。口腔内に集中するあまり全身状態に意識がいかなくなっては医療事故に繋がりかねません。常に小児の全身状態にも配慮しながら進めていきましょう。
抑制のポイントとして
- 膝
- 肩
- 頭(顔)
バイトブロックや開口器を咬ませている場合は器具が外れないように器具もしっかり抑えます。
この3点をホールドすると人間は動きを抑制されるため最小限の人数で行えます。また「10数えるよ!」「い~ち、に~い、、、」とゆーっくりと数を数えながら窩洞形成などの治療を進めていくと、小児がゴールを予測しやすくなるため効果的です。抑制治療は出来るだけ避けたいところですが、乳歯や永久歯を守るためにやむを得ず行う場合はこれらのコツを参考にしてみてくださいね。
さて今回は小児治療のコツをお伝えしてきました。子供は大人が小さくなったヒトではありません。思考や感じ方は大人とは違いますし、もちろん個人差が大きいです。その子一人ひとりに合わせて日々の診療を行っていけたらいいですね。