Ciメディカル歯科衛生士の藤田です。
新人が入職してくれたのは嬉しいけれどなかなか定着しない、すぐに辞めてしまう。スタッフの確保は歯科医院のみならず、どの業種でも昨今問題となっています。
私が勤務していた歯科医院では入職した当初は新人育成プログラムがなく、新人の頃大変苦労しましたが、2年ほど経った頃しっかりと整備が必要だということになり、院長、スタッフ全員で構築を行いました。歯科衛生士の退職理由として「人間関係」などの他に挙げられるものとして「新人教育の体制整備が行われていない」という理由も多く見受けられます。
今回は具体的にどのようにプログラムを作成していったか、人材を育てるポイントをお伝えします。実際この歯科医院は今も10年以上勤務しているスタッフがたくさんいますし、参考になる内容がお伝えできるかと思いますので、是非ご覧いただけたら幸いです。
まず新人育成プログラムの構築において欠かせない2つの要素があります。
この2つがないと新人育成はできません。
それではマニュアルの作成について説明していきます。院内で行われるすべての業務を朝の掃除に始まり、受付の締め作業などもマニュアル化していきます。目指すところは、新人に「このマニュアルを見てやってね」と渡してもOKなレベルまで簡易化し作成します。(実際にはそんな渡し方はしませんが)
院内のみで使われる用語などは使用せず(もし隠語などがあるならそのマニュアルも作成しなければいけません)誰が見ても分かる書式、様式で作成します。
マニュアルはWordやエクセルで作成しても良いですが、手書きで作成する場合はその都度変更があったら書き換えられるようにフリクションペンで記入します。小さな変更は付箋に貼って残し付箋が増えてきたら大幅にリニューアルしてもOKです。
掃除にマニュアルなんて必要なの?と思われるかもしれませんが家族の中でさえ洗濯のルールが違う経験をしている方も多いはず。例えば嫁姑の間でこのような話があります。お嫁さんはTシャツを洗う時必ず「表」にして洗う、これが常識と思って生きてきました。ですが、お姑さんは身体の汚れがついているのは裏側だから「裏返し」にして洗うのが常識と思っており、お互いにギャップを感じます。洗濯においてでさえこのような常識の違いが生まれるのですから、院内の掃除にもマニュアルは必須なのです。
マニュアルが完成したら次はどの順番で教育していくかを考えていきます。掃除などの教えやすい項目から開始し、外科処置のアシスタントなど繁雑な業務は期間をしっかり設け進めていきます。
さて、新人育成の担当者は誰が適任でしょうか?
チーフが担当者になっている医院は多いと思いますが、この医院では一番入職歴の浅い人が担当者になることに決まりました。理由として、
- 新人の頃の気持ちを一番鮮明に覚えている
- 担当者自身教えていく上で新たな気付きや成長のチャンスがある
といったベテランではないからこそ見えているポイントがあるからです。
いざ、実際に新人教育の開始です。毎朝の朝礼で新人育成の進捗を報告し、スタッフ全員で現在新人がどこまで教育が完了しているかの共有をします。
次に具体的にどのように新人育成を進めていくか説明していきます。
こうしてみると、新人が入職することは最初の数か月は人員が1人増えることにはなりません。先輩スタッフが補助につかなくてはいけないのでマイナス0.5くらいになります。新人育成はだいたい3か月ほどかけて行っていくためその期間は新人育成のためにアポイントを切ったりする覚悟が必要なのです。
しかしそこまで丁寧に新人育成を行うと新人の不満は生まれにくく結果としてスタッフの定着率アップに繋がります。そしてとても重要なことですが、しっかり育成がされていないスタッフがアシスタントにつくことの危険性を考えたことはありますか?焦って器具を落としてしまう、材料の使い方がよく分からないので治療がスムーズに進まない。など重大な医療ミスに繋がる可能性もありますよね。そしてしっかりとした育成を受けていないのにも関わらずミスを経験した新人は自信をなくし退職してしまうのです。
当時院長の口癖は「新人のミスは組織の責任」でした。最初から完璧に出来る人間はいません。丁寧に育成をし、始めて一人前のスタッフとなり組織の財産「人財」となるのです。
また人間は忘れる生き物です。1回言っただけでは伝えたうちに入りません。10回言って初めて「伝えた」となることを覚えておきましょう!
まとめ
新人育成を整備していくにはいくつかの段階があり、それぞれが内容の濃いものです。一度に手をつけようとせず院内でよく話し合い、簡単な処置や日常業務からマニュアル化し、部分的にでも新人育成を定着化していくことが大切です。マニュアルも一度作成したら終わりではなく定期的に見直しが必要です。時間をかけてスタッフ全員で取り組んでいきましょう!