高齢者の歯科受診時の対応について
近年、高齢化の進行に伴い、歯科医院を訪れる高齢の患者さんは着実に増えています。
同時に、健康寿命への意識が高まっており、予防歯科や定期メンテナンスを目的とした受診も増加傾向にあります。こうした背景の中、歯科医院として高齢者をどのように迎え、どのように配慮した診療を行うかがますます重要になっています。
そんな、歯科衛生士にも高齢者介助のスキルが求められる時代。
今回は、身体機能の低下や認知症を抱える患者さんに、安全で効果的な口腔ケアを行うためのポイントを解説します。
1. 院内での情報共有
高齢患者に対する配慮は、診療の質だけでなく安全面にも関わります。
とくに来院前の情報共有は有効で、朝礼やミーティングでその日の予約患者の特徴や注意点を共有することで、スタッフ全体が共通認識を持てます。
例)「○○さんは車椅子で来院されますので、可能であれば広めの個室へご案内ください。背中・頭部のクッションも準備をお願いします」。
高齢の患者さんは、姿勢や体格などに個人差があるため、それぞれの状態に応じて対応できるよう、クッションやタオルケットを事前に用意しておくことが大切です。
こうした準備により、患者さんに安心して診療を受けていただくことができます。
参考までに、Ciメディカルで取り扱いのある商品をご紹介します。
●MOGU
ロールクッション/ホールピロー


パウダービーズがやわらかく体圧を分散。丸めたり、広げたり、繋いだり、カスタマイズできる「ロールクッション」、枕としてだけでなく、背あてや腰あてとしても使える「ホールピロー」などを展開。
●チェアクッション
足折れタイプ/ノーマルタイプ


体圧を分散し、疲れや緊張を緩和するため患者さんの負担軽減に。PVCレザー表面に抗菌加工とフッ素加工で汚れにくくアルコール系薬品でもお手入れできます。
2. 診療室への導入時の配慮
診察室へお通しする際には、患者さんの足元に十分配慮し、安全に誘導することが重要です。
足腰に不安のある方には、入り口から近いユニットを案内したり、通路に障害物がないか確認しておくなど、導線にも注意が求められます。
また、使用するユニットチェアの種類によっても対応は変わります。


●膝折れタイプ
座りやすく、立ち上がりも安定します。スリッパを脱いでいただくと転倒リスクも軽減します。
●カウンタータイプ
足元から座ろうとされる方には、「椅子の真横からお尻を乗せてから足を乗せてください」と案内すると、スムーズに着席できます。
さらに、コミュニケーションの際には目線を合わせ、相手の反応に合わせて話すスピードや声の大きさを調整することが大切です。しっかりと耳を傾け、「話を聞いてくれている」と感じてもらう姿勢は、患者さんの安心感にもつながります。
3. 治療の際の確認と体勢
高齢患者の診療においては、全身状態や服薬内容の把握が不可欠です。高血圧・糖尿病・心疾患・認知症などの基礎疾患は、歯科治療の安全性や治療計画に大きな影響を与えるため、初診時だけでなく定期的な問診と確認が求められます。
また、服用中の薬剤による相互作用や副作用の可能性もあるため、医科との連携を意識した情報収集が重要です。
体勢面では、患者さんの身体的負担を最小限に抑える工夫が必要です。特に顎を上げすぎた姿勢は、唾液や治療の際の水が気管に流れ込みやすく、誤嚥性肺炎のリスクを高めるため注意が必要です。チェアの角度は30~45度程度を目安にやや起こした姿勢とし、顎は軽く引いた状態を保つことで、より安全に処置を進めやすくなります。

また、体に不自由がある患者さんに対しては、口をゆすいでもらう際にスピットンを動かせるようであれば口元に近づけるなどの配慮を行いましょう。
加えて、処置時間をできるだけ短縮し、疲労や緊張によるストレスを軽減するよう努めることも、高齢患者の安心につながります。
4. 口腔ケアへの配慮
治療後や日常のセルフケアでは、口腔乾燥(ドライマウス)対策が重要です。
高齢者は唾液分泌量が減少し、ネバつき・口臭・義歯の不快感などの問題が起こりやすくなります。そのため、唾液腺マッサージの指導や、低刺激で保湿効果のある洗口剤・ジェルなどの活用が有効です。
最近では、栄養機能食品として認可を受けたものや天然酵素を配合し、pHやフローラのバランスを整える製品なども登場しており、治療後のケアとして患者さんに紹介するのもよいでしょう。こうしたアフターケアの提案は、患者さんの生活の快適さや満足度の向上につながります。
参考までに、Ciメディカルで取り扱いのある商品をご紹介します。
●New Ciウェットチャージ

特許成分CI-Dextran mixを配合し、ヨーグルト風味に仕上げ、味にも成分にもこだわって開発した口腔ジェルです。唾液減少が気になる方、口呼吸やドライマウスにもオススメ。
●Ciスポンジブラシ ウェーブ

きめ細かいウェーブ型高弾力スポンジが、やさしく効率的に汚れをからめ取ります。しっかり握れる太長ハンドルは、自由に曲げられるため舌側や口蓋側の歯肉清掃が簡単に。
●オーラル7 マウスジェル/マウスウォッシュ

4種の唾液成分ラクトフェリン・リゾチーム(コンディショニング剤)、グルコースオキシターゼ・ラクトペルオキシターゼ(安定化剤)がお口の不快感を和らげます。キシリトール(保湿剤)配合でノンアルコール
5. まとめ

高齢者を迎える際の小さな配慮や心配りは、患者さんにとっての「通いやすさ」や「安心感」を大きく左右します。目の前の患者さんがどのような背景を持ち、何を不安に思い、どんな支援を必要としているかを想像しながら接することが、信頼関係の構築にもつながります。
歯科医院として、地域の高齢者の健やかな生活を支える存在となるために、私たちにできる一つひとつの取り組みを、丁寧に積み重ねていきましょう。