美歯の啓蒙サイト「歯美人Diary」を運営する、歯科衛生士の高木佐知子さん。クリニックでの臨床のほか、出張院内研修や企業向けのオーラルケア啓発活動など、幅広い活動を行っている。様々な分野にアンテナを伸ばし、歯科の可能性を広げる活動について伺いました。
PROFILE
歯美人ダイアリー株式会社 代表
高木佐知子(たかぎ・さちこ)
損害保険会社のOLやラジオパーソナリティを経て、歯科医との結婚を機に歯科衛生士としての歩みを始める。日本アンチエイジング歯科学会理事。ホワイトニングエキスパート、プロフィラキシスエキスパート、日本歯科TC協会Masterなど、様々な資格を持つ。
歯美人ダイアリー インスタグラムhttps://www.instagram.com/sachi.dc/
―歯科衛生士として働く前に、色々な職種を経験されたそうですが?
高木 小さい頃からアナウンサーになりたいという夢がありまして、東海地方のテレビ局の採用試験を色々と受けたのですが全部落ちてしまいまして、大学を卒業後、3年ぐらい損害保険会社でOLとして働いていました。それでも夢を諦めきれず、OLをしながらアナウンスの学校に通っていたところ、地元のテレビの料理番組やCMに出させていただけるようになったのです。そこで、退職してもう一度チャレンジしてみた結果、運よくローカル局に採用いただくことになり、ラジオを中心に、出演する側としても制作する側としても働かせていただきました。
―全く異なる業界ですが、そこからどうやって歯科衛生士になられたのですか?
高木 主人がたまたま歯科医師で、結婚した半年後に開業したのですが、スタッフ不足だったこともあり、お手伝いとして歯科助手兼受付として働き始めたのがきっかけでした。最初は、右も左も分からず、3日ぐらいで解放されるかなと思っていたのですが、1週間経ち、1ヶ月経ちとなり、そのうちに仕事が面白くなってきて、気が付いたら5年間もフルタイムで働いていたんです。当時は歯科衛生士が不足している状況でしたので、それであれば歯科衛生士になろうと、32歳で衛生士学校に入学しました。14歳ぐらい年下の子たちと一緒に勉強していたのですが、その頃の若い子たちはガングロが流行っていた時代で、ジェネレーションギャップを感じることもありましたが、みんなに構ってもらって楽しく過ごすことが出来ましたね。在学時に妊娠してしまって休まざるを得ないこともありましたが、絶対に資格を取ると決めていましたので、春休みも冬休みも返上して、何とか卒業することが出来ました。それから17年、助手時代を含めると24年、臨床現場で働いていることになります。
―2年前に歯美人ダイアリー株式会社を立ち上げられたそうですね。
高木 歯美人ダイアリーはもともと一般の方に向けて、歯が痛くなくても定期検診に行って下さいという啓蒙活動のために立ち上げたWEBサイトだったのですが、歯科医院からの出張研修の依頼や、ホワイトニングセミナー、企業からの講演の依頼が多くなってきまして、会社を立ち上げることにしました。
―出張研修はどういったことをされているのですか?
高木 まず、研修を始める前に、院長先生やスタッフの方々と面談をして、それから丸一日チーフとして現場に入り、色々とアドバイスをさせていただいています。決まったメニューは用意しておらず、歯科医院さんを徹底的に見させていただいた上で課題を見つけて、そこを改善していくスタイルです。課題は毎回様々ですし、技術的なことよりも意識を変えていくことを重視していますので、頭を悩ませることも多いですね。
―高木さんと言えば、ホワイトニングでも有名ですね。
高木 ホワイトニングに関しては、20年以上前からやっておりまして、当時はまだまだ認知度も低く学べるところもなかったので、家族や友人に無償で試させてもらいながら独学で勉強しました。ありがたいことに、たかぎ歯科医院にもホワイトニングを希望される患者さんが沢山いらっしゃいますし、その他にも、セミナー講師の依頼があったり、衛生士学校にて実習や国試対策の授業を受け持っています。
―その他にも活動されていることはあるのですか?
高木 日本アンチエイジング歯科学会の理事として、学術大会をはじめ色んなイベントで登壇したり、米国式予防歯科プログラムであるプロフィラキシスの講師や日本歯科TC協会の講演、乳酸菌の一種であるロイテリ菌を使ったバクテリアセラピーの普及活動なども行っています。
―歯美人ダイアリーの活動の他にも個人的な活動もされているそうですが?
高木 うちの子どもの一人が自閉症ということもあり、歯科医院での発達障害児への対応に関する講演の依頼を受けたり、児童放課後デイサービスにて、歯磨きの練習をしたり、ご家族の方にホワイトニングをするなどの福祉活動も行っています。発達障害の子どもがいると本当に大変なんです。ようやく中学生になって、ここ数年は遠出が出来るようになりましたけど、それまではどこにも行けませんでしたし、それどころか、家から子どもが脱走して何度警察のお世話になったかというぐらいでした。そんなこんなで、発達障害児のお母さんって笑顔が消えてしまうときがあるんですよ。私も笑顔がなくなってお化粧もしなくなって髪の毛もボサボサだったときがありました。ただ、やっぱりお母さんが笑顔でいたり綺麗でいた方が世の中が平和になるような気がするんですね。現に、私がお化粧をして綺麗な恰好をしていると、ムスッとしていた子どもが「わぁ!」って顔をして笑うんです。そういった実体験もあり、現在大変なご家族に本当の意味で共感出来ますし、ホワイトニングをはじめとした口元からのアンチエイジングとスマイルはすごく近いところにありますので、歯科の観点からも私が出来ることもあるのではと思っています。
―本当に幅広く活動されていますね。
高木 自分でもこんなに幅広くやっている歯科衛生士はあんまりいないのではないかと思います(笑) マスコミで働いていた期間が長いので、常にアンテナを張り巡らせていることもあるかもしれません。あとは、仕事でもプライベートでも色々な経験をしてきましたので、そういった自分の生活に根付いて一緒に進んできたというのもあると思います。歯科衛生士としては遅咲きで経験がそれほど長くはありませんし、人から見れば異色なのかもしれませんが、こんな自分だからこそやってきたことが決して回り道ではなかったと、最近になってようやく肯定出来るようになってきました。私を支えてくださっている人のためにも、歯科界のためにも、より一層頑張っていきたいと思っています。