トリートメントコーディネーターとして、歯科業界でトップクラスのセールスを誇る泉さん。1万人以上のカウンセリング経験と、歯科はもちろん多岐にわたる豊富な知識で、患者からの信頼も厚い。トリートメントコーディネーターが果たす役割についてお聞きしました。

PROFILE

くろさわ歯科医院
泉美紀(いずみ・みき)

東京都内のデザイン事務所や大手広告代理店でグラフィックデザイナーとしての勤務を経て、2011年にくろさわ歯科医院に就職。現在は、スタッフ主任兼TCとして在籍し、院内の調整役として活躍している。日本歯科TC協会 TCマスター。日本アンチエイジング歯科学会理事。


―トリートメントコーディネーターになろうと思ったきっかけを教えて下さい。

 そもそも歯科とは全く関係のない、大手広告代理店でグラフィックデザイザーとして働いていました。それが病気の母の介護をするため都内から地元の八王子に帰り、くろさわ歯科医院で受付兼助手として働くことになったのです。最初は右も左も分からない状態で、患者さんのお名前とお顔を覚えてご挨拶をすることぐらいしか出来なかったのですが、院長先生付のアシスタントとして、四六時中傍にいて勉強させていただく機会に恵まれました。そのうちに、患者さんのカウンセリングを務めさせていただくことになり、これがトリートメントコーディネーターとなるきっかけになったと思います。その後、クリニックの移転をきっかけに、ユニットが大幅に増えたことに加え、複数台のマイクロスコープや最新のCT、オペ室などの充実した設備で、審美治療、欧米式の根管治療や難症例のインプラントに注力していこうとする中で、私が患者さんや医院にさらに貢献できるために何が出来るのかと考えるようになりました。そんなときに、トリートメントコーディネーターの存在を知ったのです。歯科衛生士の資格がなくてもこれだけ活躍出来る職種があるんだと、日本歯科TC協会の認定資格を取得しました。肩書きが付くことで自信がつき、衛生士ではない私が歯科治療のカウンセリングをしても安心される患者さんも多いと感じました。今では大変有難いことに日本歯科TC協会の講師としての場もいただいており、トリートメントコーディネーターの育成にも励んでいます。

―トリートメントコーディネーターとして、どうやって勉強されたのですか?

 もちろん、日本歯科TC協会で資格取得前も後も歯科知識の勉強させていただきましたが、院長のアシスタント時代に先生と患者さんの話をよく聞いて、カルテに手書きしていたことが大きく役に立ちました。特別に外で勉強したとかではなく、本当にそれだけです。ただ、それを何百、何千回と繰り返していると、院長先生ならこういう治療計画を立てたり、カウンセリングをするだろうなというのが分かってくるのです。分からない場合でも、院長先生に「なぜ、ああいう治療計画にしたのですか?」とお聞きして、分かるまで教えてもらいました。そうすることで、院長先生の頭の中が分かるようになったのです。院長先生の仰りたいことが私を通して患者さんにもっとわかりやすく伝えることが出来ますし、患者さんから質問があっても、院長先生の考えと同じ答えを返すことが出来ますので、患者さんとしても理解し安心して治療を受けていただける。これは本当にトリートメントコーディネーターとしての私の強みになったと思います。お忙しい中でも教えて下さった院長先生には感謝してもしきれません。

―トリートメントコーディネーターとは、歯科医院の中でどのような役割になるのでしょうか?

 医院側と患者さん側の間に立つ調整役の面が非常に大きいと思います。まず、医院側が説明していると思っても、治療を受けながらだと難しい専門用語で伝えられても理解出来ていないケースが非常に多いです。患者さんにしっかり理解していただけるように、歯科の専門的な知識を噛み砕いてより分かりやすく分かるまで説明しなければいけません。また、患者さんが聞きたいことというのは、医院側が伝えたいことではないことも多く、本当に欲しい有益な情報を提供してあげることが大切です。例えば、どれぐらい痛いのかとか、腫れるのかとか、期間はどのくらいかかるのか、すごくシンプルなことだったりします。でも、患者さんは当たり前すぎるからとか、先生にお伺いするのは失礼かなと思って我々に聞けないわけです。そういった患者さんのお気持ちに寄り添いしっかりとお話を聞いた上で説明し、治療を進めていく上でも何よりも大切になります。

―泉さんはトリートメントコーディネーターの中でもトップクラスの売上を誇っていらっしゃいますが、その秘訣は何なのでしょうか?

 私も過去に経験したのですが、契約を取りたいという想いが先立つと、契約は全く取れません。私はインプラントコーディネーターの資格も持っていますが、決してインプラントだけが正解だとは思っていませんし、押し付けるようなことはありません。それは、幸せの価値観が人によって違うことを患者さんから学ばせていただいたからです。入れ歯でも、歯が無いところがあっても、ご飯は食べられますし、幸せに暮らしている人はたくさんいらっしゃいます。金銭面に関しても、歯に何百万もかけるんだったら旅行に行った方がいいという人もいますし、もちろん逆の人もいるでしょう。患者さんの価値観を理解し治療の選択肢を提案して、納得して選んでいただける状況を作ることが大切だと思います。私の性格からして「そこの歯は見えないところなのでコストを押さえるため保険にしましょう」と平気で言うようなタイプですし、院長もそれをよしとしてくれていますのでとてもやりやすいですね。そうやって地道に患者さんとの信頼関係を築いていくことが種蒔きとなり、大きな治療をしなくてはいけなくなった場合には必ず私を頼って下さいますし、長いお付き合いの中でそういう患者さんがたくさんいらっしゃいます。

―自費診療を押し付けられていると感じてしまっては、契約に至らないですものね。

 もちろんです。何を買うかより誰から買うか、そこが大切なんだと思います。それから、トリートメントコーディネーターとして契約率が高いのは、私一人の成果ではありません。院長先生が素晴らしい治療をしてくださっているおかげです。トリートメントコーディネーターの中には、それほどおすすめ出来ないことでも提案しなければいけないと悩んでいる方もいると聞きます。そういう意味では、院長先生をはじめドクターの技術力の高さはもちろん、サポートするスタッフたちが優秀な人材が揃っていますので、難症例だったとしても嘘偽りなく心からおすすめ出来ます。本当に恵まれている環境ですし、決して私だけの力ではありません。一緒に支えてくれているドクター、スタッフたちにいつも感謝しています。

―トリートメントコーディネーターとして大切にしていることを教えて下さい。

 まずは自分自身が常に健康でいることだと思っています。いつ来ても、元気で明るく笑顔でいてくれる人が変わらずに居るというだけで、患者さんは安心されます。私も人間ですので、落ち込むこともありますし、泣きたいときもありますが、患者さんにはそういったことは正直全く関係ないと思います。ですから、しっかり睡眠を取りストレスを溜めないよう運動をして、常に自分のメンタルとフィジカルのバランスを整えるようにしています。当たり前のように思いますが、意外とこれが難しいんですよ(笑) あとは、学び続けるということを自分に課しています。患者さんのカウンセリングや先生やスタッフとのコミュニケーションにおいては、様々な分野の知識が必要です。例えば、インプラントの話でも、インプラントの構造や治療内容を分かっているだけではだめで、全身疾患や服用している薬剤との関係なども把握しておかなければいけません。日頃の何気ない会話から患者さんの思いや考えを汲み取り、さらには患者さんが健康でいるためには食事面のサポートも必要になってきます。まだまだ学ばなくてはいけないことがたくさんありますね。

―特に歯科は、色々な分野に分かれているので勉強するのも大変ですね。

 大変ですが、それよりもワクワクが勝りますね(笑) インプラントや矯正、審美についても、実際に先生方の治療を間近で見学しますし、いまだにオペのアシスタントに入ることもあります。歯科技工士さんが作業されている現場を見させていただくこともありますし、常に自分の目で見たことを患者さんに伝えられるようにしています。また、日本歯科TC協会で講師をさせていただいておりますが、受講生と一緒に素晴らしい先生方の講義を何度も受講させていただいています。その道のプロである様々な先生方のお話を聞くことで知識や教養が広がり、そうやってインプットとアウトプットを繰り返すことで、さらなる人間力の向上を目指しています。“学びは最高の贅沢″ですね。

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