患者さんのメインテナンスはもちろん、歯周基本治療、ドクターのアシスタント、受付業務、消毒や滅菌…。
ありとあらゆる面で常に集中力と緊張感が必要とされる歯科衛生士ですが、PMS(月経前症候群)や生理痛で困ったことはありませんか?
今回はそういった症状や生理日コントロールにも役立ち、世界中の多くの女性に広く使われている薬「ピル」のメリットや注意点をご紹介します。

1.欧米の女性にはメリットが浸透している薬「ピル」

世界中の多くの女性に広く使われている薬「ピル」。生理日コントロールや月経困難症、生理痛や生理不順の症状、月経前症候群(PMS)の症状の緩和等に役立ちます。
また、肌荒れの改善や、卵巣がんや子宮体がん、大腸がんのリスクを低減することが分かっています。

ほとんどの女性にとってはリスクよりもメリットのほうが上回っていると考えられる低用量ピルですが日本では欧米ほど内服率が高くありません。

そこで今回は、ピルのメリットや注意点などをご説明したいと思います。

これからピルを服用しようと思っている人、既に服用しているピルの特徴が知りたい人は、是非参考にしてください。

※「避妊法2019(Contraceptive Use by Method 2019)」を元に作成。

2.日本は低用量ピル後進国?低いままの内服率

はじめに、ピルは卵胞ホルモンであるエストロゲンと黄体ホルモンであるプロゲステロンと呼ばれる2つの女性ホルモンが配合されている薬です。

このエストロゲンが含まれる量によって、高用量ピル・中用量ピル・低用量ピル(OC)・超低用量ピル(LEP)に分類され、用量が多いほど効果と副作用が高いとされています。
欧米に遅れること約40年、日本では1999年に低用量ピルが認可されました。

国連の発行している「避妊法2019(Contraceptive Use by Method 2019)」のデータによると、日本のピル内服率は2.9%。諸外国よりも日本のピル内服率はまだまだ低いのが現状です。

入手のためのハードルや性教育の遅れなど、日本で普及しない理由は様々に指摘されますが、その一つとして、そのメリットが十分に認知されていないことがあると思われます。

3.労働損失は年間4911億円に上るとも言われます

日経BP総研メディカル・ヘルスラボの黒住紗織上席研究員によると、働く女性の7割が月経症状による生産性の低下を感じており、昇進の辞退や離職を考える人も少なくないといいます。月経随伴症状による労働損失は年間4911億円に上るとも言われ、国も力を入れる「女性の活躍推進」には、こうした女性特有の健康問題に対する取り組みが欠かせません。

ピルには、いくつか種類がありますが、ここでは一般的な低用量ピルについて知っていただければと思います。

4.四つあるピルの開発世代!その違いや特徴は?

低用量ピルは、使用されているホルモンの違いなどによって、大きく4種類に分類されます。ピルによって特徴や期待される効果、値段などが異なるため、これからピルの服用を考えている方は知っておくと損はありません。

【第一世代(ノルエチステロン)】

特徴:月経量の減少、生理痛緩和効果に優れている。
一番最初に製造承認されたピルで、ノルエチステロンと呼ばれる黄体ホルモンを使用しており、生理時の出血量が減りやすく月経困難症のコントロールにも優れ、ニキビや肌荒れの改善効果もあります。ただ、場合によって副作用が出やすい傾向があります。

【第二世代(レボノルゲストレル)】

特徴:不正出血が起こりにくく、安定した周期を作りやすい。
レボノルゲストレルと呼ばれる黄体ホルモンを使用しており、不正出血が起こりにくく安定した周期を作りやすいことが特徴です。副作用とアンドロゲン量を減らす工夫がされています。

【第三世代(デソゲストレル)】

特徴:男性ホルモンを抑えられるため、ニキビ治療や多毛症の改善に期待できる。
デソゲストレルと呼ばれる黄体ホルモンを使用しており、男性ホルモン(アンドロゲン)の作用抑制効果が高く、ニキビ治療や多毛症の改善に期待が持てることが特徴です。

【第四世代(ドロスピレノン)】

特徴:月経困難症や子宮内膜症の治療目的で保険適用される。
ドロスピレノンと呼ばれる黄体ホルモンを使用しており、超低用量化されているので副作用が起こりにくいことが特徴です。ニキビやむくみが少なく、月経困難症や子宮内膜症の治療薬として使用されています。

知っておきたいピルの副作用、妊娠への影響は?

ピルにはさまざまな効果がある一方、服用を開始したばかりの時期はホルモンバランスの変化によって一時的に副作用が出やすくなります。

【報告されている副作用】

・軽い吐き気・眠気・下腹部痛・不正出血・胸の張り・むくみ・太る・うつ・落ち込み

これらの症状は一時的な副作用であることが多く、1~3か月ほど飲み続けると女性ホルモンのバランスが整い、症状の多くは次第におさまっていきます。

ピルの服用によって排卵を止めることが将来の妊娠にも悪い影響がないかを心配する人もいますが、近年の研究では、低用量ピルを飲み続けることによる将来の妊娠への影響はないということも報告されています。服用を継続する期間による差もなく、長く低用量ピルを服用している方が妊娠する確率が悪くなる、ということもありませんでした。

将来の疾患の予防になったり、不妊にもつながる子宮内膜症が改善するなどの効果を考えると、むしろ将来の妊娠のためにプラスになるかもしれません。

まとめ

辛い月経痛・PMSにはピルという選択肢を。
日本ではまだまだ服用率が低いピルですが、「生理痛・PMSの改善ができる」ということは女性たちの間では広まってきています。特に若い世代では、生理痛・PMSの改善のために服用している人が増えてきています。
自分でできるケアのひとつとしてピルという選択肢も検討してみてはいかがでしょうか?

Previous post オーラルケアサロン Lycka 前田奈美さん
Next post シチュエーション別に対策! ~ 歯科女の職業病、腰痛を撃退しましょう ~